公式サイト
1997年8月31日にダイアナ元皇太子妃が交通事故で亡くなった後の英国王室、英国の混乱をいろいろな立場の人の考えを織り交ぜながら、エリザベス女王とブレア首相の関係を軸に描いた映画。
英国王室そのものに詳しくないし、ダイアナをとり立てて好きだったわけでもないが、10年前のその時の英国王室が冷たいと言われたことは覚えている。
離婚して民間人となった彼女の死に対して王室が出来ることは何もない。
しかしそれでは国民感情がおさまらない。
王室はバルモラル城で夏をすごしており、母を失った王子たちを護るためにもロンドンには帰りたくない。
女王が不在のバッキンガム宮殿には王室旗が掲げられていない。旗を掲げるのは女王滞在のしるしだから。
しかしそこにダイアナの死を悼んで半旗をかかげることはできないのか、コメントも出さない、王室は、女王は冷たすぎる。
国民のそうした反応に戸惑い苦悩し、すぐには行動を起こせない女王。
就任間もないブレア首相はダイアナを「人民のプリンセス」と呼んだスピーチで支持率をあげる。
ブレア首相の妻シェリー・ブレアは王室廃止論者。夫とは見解の相違がある。ブレア首相は女王の人柄にも触れ、窮地に追い込まれていく彼女に手を差し伸べようとする。国民を敵に回してしまわないように。そんな夫の様子を「歴代首相が最後にはみんな彼女にメロメロ」とか「恋人に会いに行くの?」と皮肉をいい、議論にもなる。
首相の側近、広報担当?のアラステアは支持率を上げることしか頭にない。ブレアの支持率が上がる一方王室の支持率が日々下がり、新聞に王室非難の見出しが躍るのを喜ぶ。
最終的に女王はブレアの提案を受け入れてロンドンにもどり、バッキンガム宮殿の門前に集まった国民の中に車を降りて入っていく。そうした行いは第2次大戦終戦後以来だという。その後ダイアナへの追悼文をテレビの生放送で読み上げる。
一方からの見方ではなく、いろいろな考えの人がいること、その考えをそのままに出しているのに好感が持てる。映画を作っている側の主張を押し付けられることがない。
ダイアナはもう民間人なのだから、王室の一員だった時もあれだけ苦労させられたのに。というロイヤルファミリーのそれぞれの発言。フィリップ殿下や皇太后はその右翼。チャールズ皇太子の立場は微妙で国民の非難が女王に集中するように振舞ったりする。そんな中で強く感情を表すことをしない女王。見事な自己抑制。フィリップ殿下は女王のなかにもそうした感情はあるはず、と代わりに暴言に近いことを吐いているようにすら思える。それが彼の思いやりなのだろうか。
ダイアナの死によっておそらくは集団ヒステリーに近いような状態で多くの国民が宮殿の門前に花を手向け、なかには過激なメッセージを添えたものも。彼女を殺したのは王室だというような。
この事態を英国王室廃止や支持率アップにつなげることしかしない人々もいる。
ひとりの女性の死がそれを悼み悲しむというだけでは済まない大きな社会現象となっていく。
それをかなり現実に近い形で見せられているのではないか、いや現実はこうだったのだと思い込まされそうなリアリティ。
やはり女王とブレアの関係にほっとする。
ブレアはすぐにも王室廃止、という立場ではないようだ。人と人としての女王とのかかわりが見えてくる。国のために、国民のために自らを殺して生きてきた1人の女性として、彼女をきちんと敬っているのがわかる。女王もブレア就任時の承認の儀式、バルモラル城と官邸との電話のやり取りのときの頑なさがダイアナの死をめぐる提案を受け入れた後で変わってくる。ダイアナ国葬後数ヶ月経った頃の女王と首相の定時会合でのふたりの会話がいい。
女王を演じたヘレン・ミレンの存在感が素晴らしい。ヘレン・ミレンという女優が演じているのだとわかっていてもドキュメンタリーを見ているような気分になる。彼女は第79回アカデミー賞 主演女優賞を受賞、その他の主演女優賞もたくさん。派手な演技は何一つないが、女王の威厳、苦悩がよく伝わる。控えめにしか表されない愛情も。スコットランドの領地バルモラル城での生活ぶり、他のロイヤルファミリーとのやりとり、ブレア首相との関係などすべてさりげないなかに、静かだからこそ胸に迫る。
他の俳優もみな好演で、それぞれの登場人物に腹を立てたり、共感したり。作り手の思うがままにどっぷりとはまりこんで感じていたのかもしれない。けれどそれが嫌な感じではない。
スコットランドの風景、城の様子、女王のファッション。どれも楽しめる。
ベタベタの恋愛ものも、社会問題を提起されるのも、スペクタクルに身を任せるのも嫌だった私にはちょうど良い映画だった。
大げさではなくて非現実でもなくて、自分が暗い気持ちにもならない。けれどひとの心の温かい何かを感じることはできる。ちゃんとそこに心が通うものがある。
見る人の考え方によっていろいろな見方が出来る映画でもある。私は女王と首相の関係、制度より人の心をクローズアップして見たようだ。
以下印象的だった場面。
“映画「THE QUEEN」 ”の続きを読む>>
1997年8月31日にダイアナ元皇太子妃が交通事故で亡くなった後の英国王室、英国の混乱をいろいろな立場の人の考えを織り交ぜながら、エリザベス女王とブレア首相の関係を軸に描いた映画。
英国王室そのものに詳しくないし、ダイアナをとり立てて好きだったわけでもないが、10年前のその時の英国王室が冷たいと言われたことは覚えている。
離婚して民間人となった彼女の死に対して王室が出来ることは何もない。
しかしそれでは国民感情がおさまらない。
王室はバルモラル城で夏をすごしており、母を失った王子たちを護るためにもロンドンには帰りたくない。
女王が不在のバッキンガム宮殿には王室旗が掲げられていない。旗を掲げるのは女王滞在のしるしだから。
しかしそこにダイアナの死を悼んで半旗をかかげることはできないのか、コメントも出さない、王室は、女王は冷たすぎる。
国民のそうした反応に戸惑い苦悩し、すぐには行動を起こせない女王。
就任間もないブレア首相はダイアナを「人民のプリンセス」と呼んだスピーチで支持率をあげる。
ブレア首相の妻シェリー・ブレアは王室廃止論者。夫とは見解の相違がある。ブレア首相は女王の人柄にも触れ、窮地に追い込まれていく彼女に手を差し伸べようとする。国民を敵に回してしまわないように。そんな夫の様子を「歴代首相が最後にはみんな彼女にメロメロ」とか「恋人に会いに行くの?」と皮肉をいい、議論にもなる。
首相の側近、広報担当?のアラステアは支持率を上げることしか頭にない。ブレアの支持率が上がる一方王室の支持率が日々下がり、新聞に王室非難の見出しが躍るのを喜ぶ。
最終的に女王はブレアの提案を受け入れてロンドンにもどり、バッキンガム宮殿の門前に集まった国民の中に車を降りて入っていく。そうした行いは第2次大戦終戦後以来だという。その後ダイアナへの追悼文をテレビの生放送で読み上げる。
一方からの見方ではなく、いろいろな考えの人がいること、その考えをそのままに出しているのに好感が持てる。映画を作っている側の主張を押し付けられることがない。
ダイアナはもう民間人なのだから、王室の一員だった時もあれだけ苦労させられたのに。というロイヤルファミリーのそれぞれの発言。フィリップ殿下や皇太后はその右翼。チャールズ皇太子の立場は微妙で国民の非難が女王に集中するように振舞ったりする。そんな中で強く感情を表すことをしない女王。見事な自己抑制。フィリップ殿下は女王のなかにもそうした感情はあるはず、と代わりに暴言に近いことを吐いているようにすら思える。それが彼の思いやりなのだろうか。
ダイアナの死によっておそらくは集団ヒステリーに近いような状態で多くの国民が宮殿の門前に花を手向け、なかには過激なメッセージを添えたものも。彼女を殺したのは王室だというような。
この事態を英国王室廃止や支持率アップにつなげることしかしない人々もいる。
ひとりの女性の死がそれを悼み悲しむというだけでは済まない大きな社会現象となっていく。
それをかなり現実に近い形で見せられているのではないか、いや現実はこうだったのだと思い込まされそうなリアリティ。
やはり女王とブレアの関係にほっとする。
ブレアはすぐにも王室廃止、という立場ではないようだ。人と人としての女王とのかかわりが見えてくる。国のために、国民のために自らを殺して生きてきた1人の女性として、彼女をきちんと敬っているのがわかる。女王もブレア就任時の承認の儀式、バルモラル城と官邸との電話のやり取りのときの頑なさがダイアナの死をめぐる提案を受け入れた後で変わってくる。ダイアナ国葬後数ヶ月経った頃の女王と首相の定時会合でのふたりの会話がいい。
女王を演じたヘレン・ミレンの存在感が素晴らしい。ヘレン・ミレンという女優が演じているのだとわかっていてもドキュメンタリーを見ているような気分になる。彼女は第79回アカデミー賞 主演女優賞を受賞、その他の主演女優賞もたくさん。派手な演技は何一つないが、女王の威厳、苦悩がよく伝わる。控えめにしか表されない愛情も。スコットランドの領地バルモラル城での生活ぶり、他のロイヤルファミリーとのやりとり、ブレア首相との関係などすべてさりげないなかに、静かだからこそ胸に迫る。
他の俳優もみな好演で、それぞれの登場人物に腹を立てたり、共感したり。作り手の思うがままにどっぷりとはまりこんで感じていたのかもしれない。けれどそれが嫌な感じではない。
スコットランドの風景、城の様子、女王のファッション。どれも楽しめる。
ベタベタの恋愛ものも、社会問題を提起されるのも、スペクタクルに身を任せるのも嫌だった私にはちょうど良い映画だった。
大げさではなくて非現実でもなくて、自分が暗い気持ちにもならない。けれどひとの心の温かい何かを感じることはできる。ちゃんとそこに心が通うものがある。
見る人の考え方によっていろいろな見方が出来る映画でもある。私は女王と首相の関係、制度より人の心をクローズアップして見たようだ。
以下印象的だった場面。
“映画「THE QUEEN」 ”の続きを読む>>
