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homia

Author:homia
homia(ほみ)
2004年春、山岸涼子の「テレプシコーラ」を読み
同年8月東京バレエ団40周年記念ガラからバレエに通い始める
2006年7月7日ブログ開始

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東京バレエ団 マカロワ版「ラ・バヤデール」 4月17日 東京文化会館
小出さんのニキヤがとにかく観たくて取っていたチケット。まさかゼレンスキーのソロルが観られるとは思ってもいなかったし、木村大僧正というとんでもない展開まで待ちうけているとは。ニキヤとソロルがしっかりと物語を紡ぎ、囲むガムザッティと大僧正も充実してとても見応えがありました。ニキヤだけが良くても、ソロルだけが良くてもダメ、両方共に良く通い合っていなければ。ゼレンスキーは存在感が大きいので、そのあたりはちょっとアンバランスに感じましたが、二人の物語がきちんとありました。とてもいい舞台で、全幕の満足感をしっかりと味わえました。

小出さんの何が素晴らしいって、安定して確実な、アダジオもアレグロも自在なテクニックの上に音楽性と感情の豊かさが乗り、舞台の空気が気持ちよく動くということ。呼吸を合わせて目に快く、はっとしたりうっとりしながら見つめていることができるのです。ああ、ダニール・シムキンとのドン・キも観ておくのだった、次の白鳥は手配済みだぞよかった、などとひとりごち。

登場のベールをかぶったままの歩みの一歩一歩からして違います。神殿の舞姫の神秘的な、抑制の効いた存在感。最初の踊りはその延長のもの。続くソロルを待つソロは恋する乙女。なかなか情熱的に甘やかな視線で見つめるゼレンスキーのソロルとの逢瀬は幸福感に満ち、愛され満たされている女性の放つ色香もあり。官能的なひととき。柔らかく雄弁な上半身の動きがそれを語ります。小出さんにはゼレンスキーは少々背が高すぎるようで、危なげなくサポートされているものの、その身長差が少々恨めしくも感じましたが、大きくしっかりと支えてくれるゼレンスキーの腕の中で、旋回する風に揺れている可憐な一輪の花といった風情。

ニキヤとガムザッティとの対決はこの日も見応えがありました。ガムザッティの足元に控え腕輪を示された時の、柔らかいながらもしっかりとしたニキヤの拒絶。小出さんのニキヤはガムザッティとは明らかに違う世界に自分は生きていて、うらやましいとは思わない、というのが強く出ていました。既にソロルとの愛に生きることを決めているからぶれないのです。その拠り所が揺らいだ衝撃。誓ったことを告げる時の強さ。逃げ惑いナイフを取ってしまうまでが自然でした。

婚約式での踊りでは全身で泣き叫んでいるのが伝わりました。ソロルに恨みの感情があるわけでも、責めている訳でもなく、ただただどうしようもなくて悲しい。どうして?という感情すら見えなくて悲しみだけ。胸が痛くなりました。小出さんのニキヤはソロルがどうしようもない立場であることをわかっていて、きっと彼は自分を思ってくれていると信じる気持ちもある、でもそこはやっぱり揺れてしまう。そうでなくて何故、ソロルからと言われた花篭にあれほど喜びの気持ちを表現できるでしょうか。

大僧正に解毒剤を示されて、小出さんは一瞬明るい表情を見せました。これで助かるのかもしれない、そうして振り返れば去っていくソロルの後姿。今際の際にある自分を置いて去っていく恋人の姿。そこで彼女はソロルに絶望したのか、事態に絶望したのか。

第2幕の影の王国では割と体温を感じる存在感。生身ではない、幕の向こうの影、という感じが基調をなしているのですが、ソロルとの最初の部分では思いが見えました。テクニックは冴え渡っていたのではないでしょうか。ふんわりゆったりした踊りの印象が強かったのですが、凄まじい高速回転その他気迫がこもっていました。

第3幕、結婚式に登場したニキヤはソロルに向かって、「思い出して、誓ったことを」というマイムをします。それが鋭く責めているのではなく、まさに「思い出して(私のところに来て)」と言っているのだとつながったのは、神殿が崩壊した後、白いベールを掲げてソロルを導く姿を見て。小出さんは幸せな表情をしていました。やっと愛する人が私の元に帰ってきてくれた、とでもいうような。彼女はソロルの誓いを信じ、最後の最後にやはり結婚はできないと拒絶しようとしたソロルは、死を持って許され彼女の元に行くことができたのだと。ニキヤはずっとソロルを信じていた、信じていたかった。だから解毒剤を拒絶した絶望は彼へのものでもあるけれど、より事態へのものでもないのかと。

そんなふうにニキヤの行動とソロルの行動を一本に繋げるように考えたことはこれまでなかったので、このような見方もできる事をもたらしてくれた小出さんとゼレンスキーは見事というほかはありません。これこそ全幕の物語のあるバレエを観る醍醐味。

さてそのゼレンスキー。若い頃の彼には間に合っていないので、2006年のマリインスキー来日公演時に「海賊」のアリとロパートキナとの「白鳥の湖」を見たきり。「海賊」はメドーラがソーモワ、コンラッドがロブーヒン、ランケデムがシクリャローフという周りが若く(青く幼い)、存在感の大きい彼がどうにもこうにも浮きまくるキャスティングでした。ロパートキナとの白鳥は素晴らしかったけど、何しろロパートキナに注目してしまって、確かに素敵だけど峠を越えたベテランかなと。
確かに若いダンサーではないけれど、その時より踊りは調子が良かったように感じました。出てきて舞台を歩くだけで、ちょっと跳ぶだけで、いや振り返るだけでも、「ああロシアの男性ダンサーの美しい身のこなし、うっとり」状態です。プティパの全幕の真ん中男子はやっぱりロシアがいいー!もう日本で踊ることはないかも、ましてや全幕など、と思っていた彼を当たり役のソロルで観られたなんてなんと幸せなことか。
ふわっと浮き上がる、重心の高い、などと形容されるジャンプの美しさも堪能しました。踊りが大きくゆったりたっぷりしており、止める所決める所は決して外さず、回れば軸は微動だにしない。柔らかい足音のしない着地、しなやかに脚が伸びて進んでいくマネージュ、眼福の一言に尽きます。

ニキヤとの逢瀬では予想外に情熱的で甘い視線がたっぷりだったのでそれは少しびっくりしましたが、頼りになる優しい恋人は魅力的でした。深刻な事態に投げ込まれてからはゴールディングのような自然な若者らしさではなく、苦悩の色が濃かった。ガムザッティを紹介されて美しさにはっとする、という演技はありましたが、その前、彼女が歩みを進めてくるところで彼女を見ていません。額に手をやり進行しつつある現実に既に苦悩している。礼を失しない程度にエスコートもすれば、向かい合って座りもするけれど、ほとんど会話をしない。チェスもしない。この展開をどうしたらいいのだという悩みに沈みそうになるのをなんとか失礼のないようにと押しとどめてガムザッティと向かい合っている。
婚約式のニキヤの踊りのところでも苦悩が顕わ。つまりこのソロルはガムザッティには惹かれていなくて、選択の余地のないところで苦悩し続ける。そして最後にやっと違う選択をしようとする。これもまたきちんと説得力がありました。

ニキヤとソロルのドラマの濃さは前日キャストを軽く上回っていたこの日、更に特濃の存在感を放っていたのが木村さんの大僧正。この日は1階前方センターで視界も良好。下手に大僧正、上手にニキヤとか、上手にソロルとガムザッティ、真ん中にニキヤでもばっちり捉えられました。勿論目は数が足りないという感じですが。
木村さんは冒頭の登場からしてニキヤへの道ならぬ思いを秘めているのを感じさせました。こちらがそれを知っていて見ているのもあるかもしれないけど、瞳の色に神に仕える身であることを逸脱しているものが映っているのです。ニキヤを呼べと言ってしまってからのおののき。既にオーバーフロー寸前だった彼のニキヤへの恋情。呼んでしまえば何かが起きてしまう、そう予感している。でも止める事がもう出来ない。ニキヤのベールを取る前には2回も逡巡。そんな大僧正は初めてです。ベールを取って彼女を見てしまったら、もう引き返せない、自分の想いは溢れてしまうだろう、それがわかっている。さらには人目もはばからずベールをいとおしみ身悶えます。
ニキヤに狂おしく迫り想いをぶつける。彼女に拒絶され、大僧正の座も捨てると被り物を取り差し出す。信じられない、神に仕える身でとニキヤに責められても再度想いを捧げるマイムが入る。ここもまた、ここまで一途に想いを差し出そうとする大僧正はあまり見たことがないと感じました。木村さんのヒラリオンにも通じる、相手には受け入れられないのに深い純愛路線。決まっていたようなものですが、またまたまんまとノックアウトされました。
ニキヤとソロルの逢瀬を見てしまった後の、復讐を誓うところの激しさ、ニキヤへの執着、ストレートにびゅんと飛んできてわかりやすいわ、やっぱり純愛ヒラリオン型大僧正~と幕が下りた後ひとりくつくつと笑ってしまいました。こういう木村さんを見ているのが何よりも幸せ。

ラジャに告げてニキヤを殺すと言われるところでは、ソロルへの憎しみよりニキヤが亡き者にされることへの衝撃が大きい。
婚約式、ニキヤが踊るところではラジャの様子を伺い、花篭の指示が出たらすかさずマグダヴェーヤに解毒剤を用意させる、このあたりをしっかり把握できたのは久々でした。その事態に陥ることを何よりも恐れていた大僧正。でも彼の愛はニキヤを救うことは出来ない。本当にヒラリオンと同じなのだと改めて実感します。いやあ見応えがありました。次回の再演時にはまた大僧正もやって欲しい。東バで木村さんに大僧正をやらせなくてどうする、というものです。

他にもいろいろあるのですが、例えば松下さんのマグダヴェーヤが思いのほか良かったとか(実は彼はあまり得手でない)、この日も田中さんのガムザッティは良かったとか。

何はともあれ、この時期にきちんと代わりのゲストを呼んでくれ、ダンサーも来てくれて、充実した舞台を見せてくれたことには感謝のほか言葉がありません。
一筋縄で行く様な状況にない日本、その中にある自分。でもバレエを愛することは止められません。そんな気持ちにさせてくれた公演でした。

振付・演出:ナタリア・マカロワ(マリウス・プティパ版による)
振付指導:オルガ・エヴレイノフ
装置:ピエール・ルイジ・サマリターニ
衣裳:ヨランダ・ソナベント

◆主な配役◆

ニキヤ(神殿の舞姫):小出領子
ソロル(戦士):イーゴリ・ゼレンスキー
ガムザッティ(ラジャの娘): 田中結子
ハイ・ブラーミン(大僧正): 木村和夫
ラジャ(国王):柄本武尊
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):松下裕次
アヤ(ガムザッティの召使):松浦真理絵
ソロルの友人:森川茉央
ブロンズ像:宮本祐宜

【第1幕】

侍女たちの踊り(ジャンベの踊り):西村真由美、乾友子
パ・ダクシオン:
佐伯知香、森志織、村上美香、河合眞里
高木綾、吉川留衣、矢島まい、川島麻実子
長瀬直義、宮本祐宜

【第2幕】

影の王国(ヴァリエーション1):岸本夏未
影の王国(ヴァリエーション2):佐伯知香
影の王国(ヴァリエーション3):乾友子

公演感想2011 | 【2011-04-18(Mon) 23:36:16】
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